ジャケット・ベストのデザインによる見え方に引き続き、今回はパンツのデザインをご紹介します。
長い長いスーツの歴史や伝統を辿れば、それぞれのディテールに合う “相性” があります。
とことんルーツにこだわったデザインにするもよし、それらを気にせずご自身が満足できるデザインにするもよし!
男性の衣装って実は細やかなディテールがとっても多いんです。
ぜひ豊富な選択肢の中から選んでくださいね!
【タック】
フロントファスナーの両サイドにある折りヒダ(プリーツ)の有無。
タックが入ることによりヒップ〜太もも回りにかけてゆとり分量が増されていきます。
〈ノータック〉
“スッキリ・スリム・股上浅め” のスタイルが好みの方はこちら。適度にゆとり分量が入りますのでピタピタのタイトにはなりません。
軽快でアクティブな印象にしたい方もこちらがオススメです。
〈ワンタック / ツータック〉
その名の通り、ワンタックはヒダが1本、ツータックはヒダが2本。
履く位置が浅いとお腹やお尻、腰に押されてタックが開きやすいので、股上は深めに設定するのが美脚シルエットの秘訣。
タックの延長と中央のクリースライン(折れ線)が綺麗に重なって、スーっとまっすぐ下に落ちていると脚が長く見え上品で美しい印象を与えます。
【サスペンダーボタン】
本来、フォーマルシーンで着用する衣装にベルトループは付いていません。
革を身につけないことに加え、カマーバンドやベストを着た際にベルトでシルエットを邪魔しないためでしょう。
フォーマル用はサスペンダーをつけるためのボタンが腰裏についていたり(クリップタイプのものには不要)、脇錠と呼ばれるアジャスター等でサイズを調整します。
【ピスポケット】
お尻のポケットのことを “ピスポケット” と言います。
もともとピストルを差して使用していたため、ピストルポケットの略なんだとか。
よく見かけるのは『左側のポケットがボタン留め』のタイプ。
右利きの方が多く、サッと右側が使えるのが便利で実用的だからですね。
結婚式や前撮りなど、当日はご新婦様のハンカチをご新郎様が持つ可能性が高いです。
ジャケットのポケットに入れるとその部分が膨らみシルエットが崩れる原因に。
そもそも上着のポケットに手を入れる姿があまりスマートではありません。
ここぞのタイミングで、後ろのポケットからスッと差し出せたら素敵ですね。
【シングル / ダブル】
裾のデザイン、こちらも見え方が異なります。
諸説ありますがダブルの歴史は元々、裾が汚れないように折り上げたことから広まったと言われています。
そのため活動的な印象になり、本来のタキシード仕様にはあり得ないデザインなのです。
ですが昨今のウェディングシーンは多様化していて、フォーマル〜カジュアルを上手に組み合わせたスタイルも人気。
会場やシチュエーションを考慮して選んでくださいね。
最後にちょっと余談。
「ズボン」「パンツ」「ボトムス」「スラックス」「トラウザース」・・
どれも一度は聞いたことのあるワードでは?
実はいずれも指しているアイテムは全て同じ。
“ボトムス” とはスカート等も含む下半身の衣類を指し、“パンツ” はイギリスでは下着の意味も持ち、“スラックス” や “トラウザース” はフォーマルなものを指す時に使われることが多いんですよ。
3編に渡ってデザインの違いをご紹介いたしました。
細かいディテールを知ると、見るポイントが増えて衣装選びがもっと楽しくなるはず。
オーダーって “生地を選んで採寸” だけではないのです。
一つ一つデザインもこだわって選ぶから、自分だけのオリジナルで愛着の湧く特別な1着に仕上がります。
その時間も大切な思い出の一部になることでしょう。