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平山広一の絵を描くことで繋がるご縁との出会い

Update:2019.08.22
Company:Craftsman Park


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第十一回目となる今回は、絵描き(イラストレーター)の平山広一さん。

あたたかみのあるイラストを、ウエディングという特別な空間で全国は津々浦々、その人柄も含めて沢山の方に愛され、活躍されています。

そんな平山さんに、「絵を描く」ということについてお話を伺いました。

どうぞ最後までお楽しみください。

絵描き(イラストレーター)になったきっかけ

平山:絵を描くことが大好きで、小さいころからずっと絵を描いていました。

幼少期に家の壁や床などに落書きをすると、普通は怒られるのが当たり前だと思うんです。でも、僕のおじいちゃんは少し変わっていて……。ちょうど正月の頃に、ふすまの入れ替えをするときがあったのですが、そこに「絵を描いていいよ」と言ってくれて。それでも子供ながらに「よくないことだ」と思い込んでいたので、ふすまに対して小さめに絵を描いたのです。

そしたら「こんなに描けるところが沢山あるのに」と挑発され、思わずふすまをはみ出して大きな絵を描いてしまったことがあって……。

さすがに怒られると思ったのですが、逆に「大きく描けたね!」とすごく褒めてくれたんです。それがとても嬉しかったことを、鮮明に覚えています。ただ、その後にじいちゃんは、ばあちゃんにこっぴどく怒られていましたが(笑)。

そんな経験も手伝って「絵を描いたら、褒められる」という認識が根付き、絵描きになりたいという夢を小さいころから描くようになっていったと思います。

絵描き(イラストレーター)になるためにどのようなことをしましたか

平山:絵描き(イラストレーター)になるため、というわけではありませんが、いつもスケッチブックとボールペンと鉛筆を持ち歩いていて、どこでも絵を描くことができるようにしています。

それは、電車の中や友達と会っているとき、実はこのインタビューの最中も描いていました。怒らないでくださいね(笑)。

十数年前から大げさでなく、365日毎日描くことを日常にしてきたので、今では習慣になっています。習慣にできたことは自分にとって良かったです。

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インタビュー中にもにこやかに絵を描く平山さん。

イラストを描く時の愛用の道具を教えてください

平山:いつも持ち歩いているのは、おもにPILOT製のボールペン(1.6mm)と、三菱のHi-uniというシリーズの鉛筆です。

特別に高い物や手に入りづらい道具ではないのですが、ご縁があった物を長く使わせていただいています。

ボールペンは、もともと自分の父親が愛用していたもので、身近にあったことが大きいです。日常的に沢山使うものなので、もし最初に手にした物が特殊なものだったら、手に入れるのが大変だったと思うので、父親には感謝しないといけないですね(笑)。

また「1.6mm」という太さが、筆圧が高くシンプルな線で描く僕のタッチにはあっていたようで、愛用しています。

鉛筆に関しても、ご縁があったものとなるのですが、僕の周りには同じように絵で生活をすることを志した友が多くいました。ただ現実は厳しく、趣味として描いている人はいても、絵で生活を続けられている人となると、ほんの一握りです。なかには絵をやめてしまった友達も多くいます。そういった友達から、使わなくなった鉛筆や画材が送られてきて、それを使ったことがきっかけとなっています。

たまたま「Hi-uni」が多く送られてきたわけですが、国産の鉛筆のなかでも色濃く濃淡の色幅や色の伸びがあり筆圧にも強い鉛筆だったので、とても指に馴染んでくれました。

鉛筆とともに「鉛筆ホルダー」も愛用しているのですが、友から譲り受けた道具なので最後まで使い切るために小学生ぶりに購入し、鉛筆が小人サイズになる最後の最後まで使いきれるようにしています。

そんな中、ウエディングのお仕事のおかげで、数年前に三菱の文房具の販売を担当なさっていたご新婦様を描くことができ、参列席におられた会社の部署の方々に「Hi-uni」を愛用していることや、いつも絵を描く時に助けていただいている感謝を直接伝えることができました。

式後にお二人から「Hi-uni」のセットをプレゼントとしていただいたのですが、とても嬉しかったことを今でも覚えています。

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愛用の文房具たち。

絵の道具ではないのですが、ウエディングという場で身につけているアイテムには友人の力をお借りしています。

蝶ネクタイは、mutin(ミュティン)という友達夫妻が経営しているウエディングドレスのブランドに、フルオーダーメイドで作ってもらいました。

デザインはすべてお任せで作ってもらったのですが、友人が僕が絵を描く場は「新郎新婦を結ぶ場」であること、そしてその一役を担う仕事をしているという思いを込め、シルエットは対象なのですが、作りは左右非対称のデザインで、左が新郎を右が新婦を表し、それを結ぶ蝶ネクタイとして仕上げてくれました。今ではこれが僕のトレードマークの一つとなっています。

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mutinのフルオーダーメイドの蝶ネクタイ。

それと同じく仕事では、moto(モト)というブランドの黒い本革のデザートブーツを愛用しています。この靴も友人が僕にプレゼントしてくれた品です。

当時、僕はお金があまりなく、ボロボロになった黒い靴に修理を重ねながら使っていました。それを見かねた友人がプレゼントしてくれたのが、この靴でした。

一枚革でくるぶしまでしっかりと包む作りなのですが、使うほどに柔らかく馴染んでくれる革のおかげで、脱げることなく色々な体勢で絵を描くことができ、本当に僕にピッタリの靴でした。

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motoの本革デザートブーツ。

周りの方々が、僕の絵の職業をよく見てくださっていることに感謝しています。

独特なタッチのイラストの画風はどのように生まれたのでしょうか

平山:もしかしたら、最初は写実的な絵が不得意だったからこそ、それを補うために個性を持ったのかもしれません。ただ線数が多い絵ではなく、線数が少ないシンプルな表現になったのは、日常的に絵を描くことが習慣になったからだと思います。それは、その場ですぐ描きあげるということが、大きく影響しているように思います。

なかでも電車などで描く際は、描く対象が次の駅で降りてしまうことも多く、「早く描く」が「早く捉える」になり、必然的に少ない線数で対象を紙に落とし込む癖がつきました。それが今のシンプルな線で「人物」や「景色」や「静物」を表現することに繋がっていったように思います。

このように日常的に絵を描いてきたおかげで、自分のタッチで素早く絵を描くことや、描く対象の仕草や様子から、なんとなく「次の駅で降りそうだな」といった相手の行動を見分ける観察力を身につけられたのだと感じています。

これは「ウエディング」という大切な場で、限られた時間のなかで、お二人と大切な参列者の方々を全員入れた絵(スナップスケッチ )を描くには、本当に必要不可欠な訓練だったと思います。それを知らず知らずのうちに積み重ねてこられたことは、ご縁の巡り合わせもあると思いますが、運が良かったと今でも思っています。

デジタルではなくアナログの方法で絵を描く理由

平山:僕が好きなことは、紙に自分の絵を描くことです。得意なことも、直接描く表現だと思っています。大変な時もありますが仕上がりを見るのは、いつもワクワクしますし楽しみです。

もちろん仕事でデジタルが必要なときがあるため、ある程度はできるようにはしています。ただデジタルが好きな人と同様の努力はできませんし、ましてや勝てる気がしません(笑)。

もし僕ができないことがあれば、仕事を独り占めするよりも、それを好きで楽しんでいる得意な人にやっていただくことで、もっと素敵な、より良いものをお客様に届けられると思っています。

影響を受けたイラストレーターについて

平山:母親が好きだったこともあるのですが、市民の生活や哀歓を描写力とイラスト的な表現で見事に表現する画家でありイラストレーターでもある、ノーマン・ロックウェル氏です。

沢山のポストカードやカレンダー、CMなどにも絵が使われているので、皆さんも一度は目にしたことがあると思います。大衆が感じた今を、親しみやすく、そしてリアルに、時にブラックユーモアを交えて描く絵を、僕は風刺画のように感じており、またその生き様も尊敬しています。大好きな絵描きさんの一人です。

今まで描いた絵の中で一番思い出深いものを教えてください

平山:絵のお仕事はそれぞれに思い入れが強く、一番をつけるのが難しいのですが……。

ウエディングに絞らせていただくと、さまざまなお式で絵を描かせていただくなか、そこに参列なさっていた方から、数年後にご依頼をいただく機会があり、こういったご依頼のご縁が巡ると、その当時に描かせていただいたお二人の気持ちを、少しでも皆様に届けることができたのだと感じることができて、本当に嬉しく思いました。

また、これはすごく個人的なことになってしまいますが、僕は絵で生活をすると決めてから、友人知人には自分から絵を買って欲しいとは「言わない」「頼まない」というルールをもうけ、絵を重ねてきました。

決して強い人間ではないので、そうでもしないと周囲に甘えてしまうのが目に見えていたのと、同情ではなく本当に絵が欲しい方に巡り会うために決めました。

ありがたいことに、この数年間で何度かストーリースケッチを友人に依頼してもらう機会に恵まれました。ただ当日の式で描くスナップスケッチは、友人や兄弟へのプレゼントとして描かせていただくご縁はあったのですが、友達本人の式で描く機会は、まだありませんでした。

そんななか今年初めて、友達本人の式で絵を描くご依頼をいただき、自分なりに歩んできた絵の道での一つの夢を叶えることができました。本当に嬉しく、そしてこれは、今までに絵の依頼をくださった皆様がいたからこそだと、あらためて感謝の気持ちでいっぱいになりました。

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◎スナップスケッチ https://hirayama-kouichi.net/snap
◎ストーリースケッチhttps://hirayama-kouichi.net/story
◎過去作品 https://hirayama-kouichi.net/archives

絵を描いていて大変だったことはありますか

平山:基本的に絵の仕事は、どのお仕事も大変さと楽しさが入り混じっています。

とくにウエディングは、限られた時間内にその場で描ききるという緊張感が、つねに背中合わせにあるお仕事なので、周りからは「本当に大変な仕事だね!」とよく言われます(笑)。

ただ僕にとっては、大好きな絵を通して、誰かを喜ばせることができるので、大変さよりも描き上げた時の充実感や達成感の方が、数十倍以上に価値があり本当に良い仕事に巡り会えたと感謝しています。

依頼の絵を描く上で気を付けていることはなんでしょうか

平山:もちろんクライアントやお客様のご希望にお応えした絵を描くことなのですが……。

これは自分独自の考え方になってしまうのですが、お客様の為にも僕自身が自分の部屋に飾りたいと思う絵を仕上げることを意識しています。

やはり自分が気に入ったモノをお客様へお渡ししたいですし、自分の絵を誰よりも好きなのは、自分自身でいたいなと思っています。変わり者だと思います(笑)。

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スキルアップのために行っていること

平山:すでに毎日の習慣となってしまっているので、意識的にスキルアップのためにやっていることとはいえないかも知れませんが、やはり13年間、毎日必ず1枚は絵日記を描き重ねてきたことが、自分の画風で世の中の情景を絵へと変換する訓練になっていたと思います。

またそれ以上に大切なのは、描いた絵をちゃんとお金と交換してもうために、相手としっかり対話し時に交渉することだと思います。ただ絵を描くだけではなく「売る」ところまでを一つの作品として考える。

本当に苦手だったので、何年も逃げまわってきましたが(笑)。

でも、そのことと真っ直ぐに向かい合うことは、絵で生活をしたかった僕にとっては、本当に重要な課題であり、今でも磨かなくてはいけないスキルだと常々感じています。

オリジナルの額について

平山:最初は原画のみを納品していたのですが、お客様から「オススメの額はありますか?」という質問が増えたこともあり、一時期、本当に沢山の額を購入しました。どれも素敵な額だったのですが、市販の額だと「誰が作っているのか」「どこの木を使っているのか」など、その額自体の物語を深く知ることができずに悩んでいました。

そこで単純ですが、せっかく自分のオリジナルの絵を気に入って依頼をくださったお客様に渡すなら、絵と同様に他では手に入らない「オリジナルの額」を作ってしまおう!と決めました。

そこからは、額の作りや使う素材など、本当に何年も試行錯誤を重ねました。そして辿りついたカタチが、今の額となります。

額に使う材木は、一つの役割を終え何世代もそこに暮らす方々と生活を守ってきた取り壊しが決まった家の建材達で、解体現場に立会い、状態が良い物だけを引き上げさせていただき、一度製材し直し、そこから金具を一切使わないつくりで組み上げ、一つ一つ作っています。

廃材という言い方もできますが、数十年、数百年前に建てられた家の柱や、天井、床、梁は、本当に素晴らしい木達が使われていて、僕はそれを廃材(ゴミ)だとは思いませんでした。

そういった物語がある木達を使っているという意味を込め「STORY WOOD FRAME / ストーリーウッドフレーム」と銘打って、今は友人に一から制作をお願いしています。

額になるまで、とても沢山の工程があり、大量には作ることはできませんが、その分、ひとつひとつの物語を紐解けるように、大切に作っています。その一貫として、額には「HISTORY NUMBER  / ヒストリーナンバー」というナンバリングを一額ずつ入れており、その額がどの地域の、どなたの家の、どの建材部分で、何額作られたかの詳細がわかるようにしており、家主の方に建材達がどのように使われ旅立っていったかを報告できるようにしています。

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◎「STORY WOOD FRAME」Instagram https://www.instagram.com/story_wood_frame/

結婚観について

平山:沢山のウエディングの場に携わらせていただき、二人の大切な方々が一堂に会する場に触れ、互いの人生が交わり繋がっていく風景は、一つとして同じものはなく、一人ではできないことが溢れていて、ともに歩んでいくことの大変さもあると思うのですが、面白そうだなと感じています。

絵を描いていてよかったことはなんでしょうか

平山:自分が自分らしくいられることが絵を描くことだったので、絵を通して人の役に立てる場があったことは、それだけでありがたいことだと思っています。

これからも絵を通じて、沢山の方々と繋がり、その中で誰かの笑顔に繋がれたら嬉しいです。

ウエディングでの絵以外で、今後やってみたいことはなんでしょうか

平山:すでにとりかかっていることになってしまいますが、毎日描いているスケッチをレプリカ作品として販売することを考えています。

先ほども言いましたが、僕は日常的に習慣で365日、毎日スケッチをしています。電車に乗っている人や、街や駅で見かけた人、家族や友達、様々な風景、自分の感情など。でも、これはあくまでも絵描きとしての習慣であり、絵の仕事であれば訓練のつもりで描き重ねてきました。

作品として世の中に出すために描いてきた絵達ではないのですが「このスケッチが欲しい!!」と言っていただくことが非常に多く、ここ数年ほどはスローハウス(アクタス)さんとのタイアップでの展示会の機会でのみ、レプリカ作品に仕上げて、販売を試みてきました。ありがたいことに、展示会での売れゆきもよく、毎日のスケッチのレプリカ作品を多くの方がご自宅へと持って帰ってくださいました。

そんななか、僕を取材にきてくれたご縁から、今の僕のWEBサイトを作るにあたり、コピーライターの寺門常幸さんという方に出会いました。彼は全ての文字周りや構成を担当してくれることになったのですが、彼との打ち合わせの最中、例のごとく彼をスケッチしていたのですが、そこでも「とても素敵な絵ですね。そのスケッチは、作品として購入はできるのですか?」と絵を購入したい希望を伝えてくださり嬉しく思う機会がありました。

いつもはここで話が終わるのですが、ある時、寺門さんから提案があり「毎日のスケッチを、限られた人だけではなく通常販売してみませんか?」という提案をいただきました。その話を楽しそうにする寺門さんに触れ、何万枚も描き重ねてきたスケッチたちに、初めて僕以外の人が本気でスポットライトを当ててくれたように思い、本当に心が動かされました。それと同時に、このスケッチたちも世の中に送り出したいという強い気持ちが芽生え、販売をお願いすることにしました。

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こうして僕の毎日描いているスケッチたちを、レプリカ作品として販売する際の名前が決まり「365 SKETCH DIARY / 365スケッチダイアリー」となりました。これはコピーライターである寺門さんがつけてくれた名前で、僕が毎日欠かさずスケッチをしていることを「365」という数字で表してくれています。

この「365 SKETCH DIARY」は寺門さんが中心となってすすめていただくプロジェクトになるのですが、僕が毎日描いてきた絵たちが、ただ倉庫で眠るだけではなく、世の中に広がっていくと思うと、今からワクワクしてしまいます。詳しくは、以下のサイトより見ていただけると幸いです。

◎「365 SKETCH DIARY」販売サイト https://hirayamakou.thebase.in/

◎「365 SKETCH DIARY」Instagram https://www.instagram.com/365_sketch_diary/

終始にこやかで手元の鉛筆が止まることなく、インタビューをさせていただきました。人との出会いを大切にされていて、大事に言葉を選びながらお話される姿がとても印象的でした。
これから進んでいくプロジェクトがとても楽しみです。

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PROFILE
平山 広一 (ヒラヤマ コウイチ)
HP:https://hirayama-kouichi.net/
Instagram:https://www.instagram.com/koukou_9/

365日どんな時も、ペンとスケッチブックを持ち歩き、
街ゆく人から大切な人まで、あらゆる人物を即興で描く。
現在は、ウェディングを仕事のフィールドとしており、
「SNAP SKETCH」と「STORY SKETCH」という2つの表現手法で、
新郎新婦の「幸せ」をカタチにしている。
被写体の心の機微までも映し出す、やさしくて、温度のある線が持ち味。

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