小さなパーツですが、実はタキシードやウェディングスーツの印象を左右するとても重要な “ボタン”。
そこにもこだわりを詰め込めるのがオーダーならではの楽しみです。
天然の素材で出来ているものから、樹脂・金属・ガラスなど種類はさまざま。
そこで今回はご新郎様衣装のボタンについて紹介します。
昨今『自分達らしい魅せ方』が主流でスタイルも多様化しているため、「これはOK」「これはダメ」といった厳格なルールは曖昧になりつつあります。
ですがゲストをお招きするホストとして、会場や雰囲気に合わせた最低限のマナーは守りたいものです。
ぜひ参考にしてくださいね。
【くるみボタン】
金属や木で出来たボタンの表面に布や皮をくるめて作られます。
そのため木の実のクルミではなく “包み(くるみ)ボタン”の名がついています。
タキシードでは王道の仕様で、衿の拝絹生地と同じものを用いることが多いです。
一方、スーツの生地と合わせた場合は柔らかい雰囲気にまとまります。
ビジネススーツにはない非日常感が演出され、主役に適した印象になりやすく人気があります。
余談ですが、本格的なタキシードのフロントボタンは『拝みボタン』と呼ばれる仕様になっています。前端を突き合わせて留める様が “手を合わせて拝んでいるように見える” ことからその名がつきました。
左右対称で、美しいシルエットになるのが魅力です。
【樹脂ボタン】
ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの樹脂を原料にしたボタン。
豊富な色を自由に表現でき、天然の貝や水牛・ナットに似たものもあります。
樹脂の段階で色をつけたり、ボタンに加工してから色を乗せることもできるので様々なデザインが作られています。
水牛調の模様に焼き加工を入れ、縁にも色が入ったもの。
独特な風合いがお洒落な雰囲気を醸し出し、水牛調とはいえカジュアルな印象になります。
【ナットボタン】
ヤシの実の種が原料になっている高級ボタンの一つ。
ナットに限らず天然の素材からできているものは、使い込むほど手の油分も染み込んで表面に艶が出てきます。
乾燥を防ぐことによって割れにくさにも繋がり、耐久性に優れています。
コックリとした単色の色味が特徴的で、式以外ではスーツよりジャケットに使われることが多いです。
ナチュラルでカジュアルな雰囲気と相性はバッチリ。
【貝ボタン】
貝殻から一つ一つくり抜かれて作られ、同じ模様はありません。
それこそまさに天然の証であり高級ボタンの特徴です。
貝殻の持つ輝きが美しくエレガントな印象になり、新郎衣装ではリゾートシーンとの雰囲気に非常に相性が良いです。
【水牛ボタン】
牛の角から作られ、天然素材の中でも最高級品です。
原料が角ですから耐久性は抜群で、ナットボタンと同様に使い込むほど艶が増します。
樹脂ボタンでも似たような色柄はありますが、天然ゆえに全ての模様が違いますのでハッキリと違いを見分けることができるでしょう。
ツヤありのタイプは見た目の上品さが増し、ツヤなしのタイプだと派手すぎず重厚感が宿ります。
特に自然光下では光沢の見え方が異なるので、どちらを合わせるかによって全体の印象が変わります。
ご紹介した貝や水牛ボタンは、生き物が原料のため “殺生” という意味に繋がり冠婚葬祭には不向きとされています。
ですが最近の慶事では、華やかな装飾としてコーディネートに取り入れる方が増えてきました。
会場の雰囲気を損ねたり、ゲストを不快な気持ちにさせない程度であれば衣装に用いても問題はないでしょう。
【メタルボタン】
ギラついた強い印象になってしまうので、厳かな会場にはミスマッチです。
ですが例えば挙式ではくるみボタンで過ごし、お色直しのタイミングまでに急いでボタンを付け替えて衣装チェンジするのも一つの方法です。
タキシード1着でもボタンを変えるだけで、挙式のスマートなスタイルから印象がガラッと変わりコーディネートの幅も広がります。
ちなみにメタルボタンが軍服に使われていた当時は “鉄” で作られていたとか。
天然や加工品などの素材の違いは、着用シーンやお2人のイメージに合うものを選ぶと良いでしょう。
もし色に迷った時はご新婦様のイメージカラーやブーケ・ブートニアの色を取り入れると2人で一つのコーディネートが完成します。
もしくは靴の色と近い方に合わせるとまとまりやすくなりますよ。
《番外編:シャツとスタッズボタン》
シャツも同様で、基本的には貝ボタンは使用しないほうが無難です。
ですが元々シャツは下着であり、そのボタンを見せないように装飾品としてスタッズボタンが使われ普及されました。
そのためスタッズボタンはオニキスと呼ばれる石の素材や、貝の素材で光沢のあるものがメジャーになっています。
他にも “ボタンの付け糸が見えるのは美学に反する” という説もあるとかないとか。
“たかがボタン、されどボタン”
小さなボタンですがタキシードでは伝統のスタイルとして現代まで受け継がれ、ウェディングスーツでは非日常の特別感を演出する大切な存在として重要なパーツです。
式が終わったらお好きなボタンに付け替えることもできますのでお気軽にご相談くださいね。
そうそう!良い洋服には良いボタンが付いていますから、処分する時はボタンだけ外しておくこともオススメします。