“オーダーメイド”って好みの色柄の生地を選べて体型に合ったフィッティングをするから特別な1着になると思われがち。
ですが、実はデザイン選びも重要なポイントの一つ。
ささやかな違いでも全体の見え方や魅せ方、着る人の印象に大きく影響します。
そこで今回は【デザインによる見え方 ージャケット編ー】をご紹介。
昨今ご要望の多いアースカラーの中でも、特に人気のカーキ色で印象の違いを見比べてみましょう。
間違い探しのような感覚でぜひ楽しみながら参考にしてくださいね。
まずはAとBの場合。
どちらの生地もたてとよこの糸の色が異なるので、生地に霜降りのような表情が出てきます。
そのため陰影があり無地でも“べたっ” とした印象は感じられません。
どちらもラペルはピーク。
(衿の種類については《タキシード ラペルの種類》で詳しくご紹介しています)
甘い雰囲気がグッと締まりますね。
ちなみにラペルの太さや、ボタンの位置に違いがあるのがお分かりになりましたか?
これらは身長・肩幅・体型などのバランスに合わせて細部まで調整を行っていきます。
ではデザインを見比べます。
パッと見て、フロントのボタンの数が違いますね。
A:1つボタン
タキシードなどのフォーマル衣裳やデザインスーツでよく見られるディテール。
ビジネススーツではほぼ見かけません。
B:2つボタン
ビジネス〜カジュアルまで定番中の定番。
フォーマル以外で選ばれる基本的な仕様。
続いてポケット。
A:胸・箱型ポケット / 腰・フラップ(フタ)付きポケット
スーツのディテールでもお馴染みのデザイン。
B:胸 / 腰・パッチポケット
ジャケパンスタイルでよく見る仕様。
カジュアルなデザインには欠かせません。
それぞれの見え方の違いがわかりましたか?
Aはフロントボタンやポケットでフォーマルっぽさを残したデザインの印象に。
一方Bはパッチポケットの印象が強く、全体的にカジュアルテイストの多いデザインになっています。
Bのようにシャツ・ベスト・小物などに複数の色物が入る場合は、アクセントカラーでしっかりと引き締めることが大切。
例えばフラワーホールの色を変えてみたり、顔まわりでポイントを効かせると全体が一気に引き締まりますよ。
次にCとDの場合。
どちらもノッチドラペル。
生地は混じり気のない単色のため、どこかで “締め” を入れないと全体がのっぺりとした印象になりがち。
ダークな色のボタンでポイントを入れるとグッと大人なコーディネートにまとまります。
こちらも違いを見比べてみましょう。
よ〜く目を凝らしてください。
いやいや、ボタンの違いではないですよ!
ジャケットとベストの縁。
ステッチの有無が見えますか?
C:ステッチなし
D:ステッチあり
“ステッチあり=カジュアル”なイメージをお持ちの方も多いですが、そんなことはありません。
ステッチの装飾が入ることにより生地に陰影が生まれ、さりげなくも全体のアクセントになります。
表裏の生地がステッチで抑えられることにより、耐久性がアップするというメリットも。
そしてもう1箇所。
腰のポケット。
Cは奥に向かって少し角度がついているのがわかりますか?
一方Dは横に平行に付いています。
C:斜め(スラント)
D:平行
元々は乗馬時に便利なように敢えてポケットを斜めに傾けたルーツがあります。
その名残のデザインで、現在は視覚効果の高いディテールの一つ。
角度がつくことにより、何処と無くウエストのシェイプとバストの逞しさを感じられます。
ウエストラインのシルエットをシュッと魅せたい方は“斜め(スラント)”がオススメ。
ちなみに、ポケットの位置やフラップ(フタ)の幅も印象に大きく影響します。
そこを調整できるのもオーダーならではですね。
デザイン選びの際「一般的には〜」とか「デザインの相性」など組み合わせのベースとなる歴史や伝統はありますが、現在では一概にそれが正解とも限りません。
せっかくのオーダーですから、ぜひお好みに合わせて思いっきりカスタマイズを楽しんでください。
もちろん迷ったり悩んだときはオススメをご提案しますのでご安心くださいね。
そうそう!
余談ですが一般的に“カーキ色”と言われて思い浮かぶのはグリーン系が多いと思いますが、本来のカーキ色ってもっとベージュのような色味なんですよ。
多くの方に認識されているカーキは、実は “オリーブ色”と呼ばれることも。
次回はベストのデザインによる違いを見比べてみましょう。
お楽しみに。